空を見上げる
ここ数日、日中になるべく歩くようにしたら
夜10時を過ぎると猛烈な睡魔がやってくる。
私は年寄りか。

さて。
今日昼間出かけていたので、
いつもより少し遅い夕方に家に着いた。
ふと空を見上げると、
綺麗な茜色の空にぽっかり月が出てた。

もう1年経つが、私の父の葬儀の最後、
葬儀場の玄関先で亡き父を乗せ火葬場へ向かう
霊柩車を見送る時、私が親族代表挨拶をすることになった。

前日のお通夜終わりに、葬儀の挨拶は喪主の弟、
見送りの挨拶は私と決まった。
お通夜の夜は斎場に泊まり込み、父にお線香をあげながら、
翌日の代表挨拶の内容を考え、覚えた。
弟は酒を飲み、ぐーすかと早々に寝ていた。
おいおい、ちゃんと挨拶は考えたのかよ…。

しかしながら、姉弟の考えは似たもの同士だ。
話し合った訳でもないのに、先に挨拶した弟の話の内容と
前半半分がほぼ同じ内容だったのだ。
弟が話し始めてびっくりした。同じじゃん、やばい…。
それを知って焦っているのは私だけ。

このまま葬儀が終わって、父を霊柩車に乗せたら、
数分後には私の挨拶。今弟が言ったばかりのことを
リピートする訳にはいかない。
なんで同じなんだよ、全くっ。

どうしよ、どうしよ。

挨拶の声が詰まる。父が亡くなっても私はちっとも
悲しくなかったので(いきさつは省略)涙は出なかったが、
葬儀の間疲れで気分が悪くて座り込んだのも、声の詰まりも
周りの人には、悲しんでいるように見えたかもしれない。
声が詰まったのは単に焦っていたから。

昨日覚えたことは頭から削除して、
父の戒名の話をした。
父の戒名には「冬」と「月」と言う文字が入っていた。
お坊さんから戒名の理由を聞いたので、とっさにその話をした。

そして、葬儀に参列して頂いた皆さんには、
生前父が迷惑をかけっぱなしだったことを、
詫びずに逝ってしまったことを、娘ながらに申し訳なく思い、
「生前、感謝や謝罪を素直に口にできる人ではなかったので、
これからもし冬の空に綺麗な月が出ているのを見たら、
父から皆さんへのお詫びと感謝の気持ちだと思って下さい。」
と、挨拶を締めた。

私は傍若無人な父とは本当にそりが合わなかったので、
父のことを考えたり、夢に出てきたりすると、
めまいがひどくなるなど、具合が悪くなるほど苦手な人だった。

それなのに、冬の空は空気が澄んでいて月が綺麗だ。
自分が言った言葉をどうしても思い出す。
そして、苦手だった父のことも。

そして葬儀に出ていた親族にも時々言われる。
「先日、月が綺麗であなたのお父さんのことを思い出しましたよ。」と。

うーっ。
綺麗にまとめすぎたことを後悔。
父は本当に厄介な人だったのに、
私がすっかりいい印象にしてしまった。
仏の身になったことで、迷惑をかけたみんなに
謝罪と感謝の気持ちをどうか持ってくれと、願うばかり。

月と父をリンクさせてしまったことは悔やまれるが、
空を見上げるのは好きだ。昼間の晴れた青空もいいし、月の輝く夜空も。

今日の夕日にぼんやり光る月を見て、
知り合いのご冥福を祈った。
あんなに綺麗な夕焼け空に浮かぶ月だったから、
きっと天国で安らかに過ごされることだろう。
月に捧げる祈りがまた一つ増えた日である。


  
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